Q A
Q.
資料の共有を希望。
結果まとめ資料の共有を希望。
早く評価手法を確立し、公表されることを期待。
定量化に関して更新情報があればセミナーを開いてほしい。
A.
今回のセミナーでのご意見をふまえて、令和7年度末には資料を完成させ、資料完成後に公開を予定しています。公開に際しては再度セミナーの開催を検討しています。
Q.
水源涵養機能を増進する→蒸発散を減らす森林づくり と受け止められる可能性があり、留意事項を記載し、意図しない森林づくりを促進されないようにしてほしい。
蒸発散を中心に据えたこの指標の考え方として林床へ到達する雨水量は多い方がいいのか、それとも少ない方がいいのか? 前提は?
様々な取組みを公表し、多くの担い手に真摯に取り組みを進めて貰うよう推進して欲しい。
A.
現在進めている簡易評価手法は、セミナーでも説明したように、3段階となっています。第一段階は、森林管理の活動全般の評価、第二段階は森林が存在することによる洪水時の水量の調整量の評価、第三段階は森林の生長や状態(密度)による蒸発散量の評価となります。とくに人工林の密度管理は蒸発散量と関連しています。蒸発散量の減少により、雨水が地下に浸透することは、水資源かん養(渇水緩和)につながります。森林管理と蒸発散の変化がもたらす水流出について、ご指摘を踏まえ本資料が意図し目指す部分をきちんと明記し、多くの方に参照いただけるよう進めます。もっと見る
Q.
森林の洪水緩和機能においては、土壌の保全を図り洪水ピーク流量が高くならないようにすることが重要と考えるが、提案の方法では森林の蒸発散量が裸地と比べて大きく、蒸発散量が大きいほど洪水緩和機能が大きいという結論にならないか。
森林土壌の違いによって雨水を保水する効果が異なり、洪水流の時間変化をなだらかにし、ピークを低減し水害を軽減する効果がもたらされる。森林土壌の違いがこれら効果を生む、だからこそ森林管理が重要と考える。
A.
本簡易評価手法では、Volumetric Water Benefit (VWB) の考えに基づき、森林流域における、特定のプロジェクトに対する水資源かん養を定量的に評価する指標としています。森林流域でのVWBは、森林管理や保全活動によって、流域の水収支がどれだけ、維持されたか、改善されたかを示します。これは、森林が森林として維持された場合の洪水緩和効果、地下水の維持などを含みます。そのため、ここでは、河川管理や治水計画において重要となる計画対象となる洪水の規模(ピーク流量)を設定するための基本高水などの基準とは異なり、降雨-流出時の水の全体量(直接流出量)を評価する手法として、カーブナンバー法(第二段階)を用いています。カーブナンバー法では、降雨-流出時において蒸発散量を評価していません。蒸発散量は、平水時や渇水時の水量を評価するための水資源かん養量(第三段階)で用いており、洪水流出の評価と分けて考えています。
森林土壌は、森林の水流出プロセスにおいて最も重要と考えております。そのため、森林土壌が洪水流出の遅れをもたらし、流出ピークの低減、さらには岩盤深部へのさらなる浸透をもたらすことは重要な点です。本簡易評価手法では、森林が森林として維持されている場合、森林の植生(樹冠遮断)とその土壌構造(落葉層、マクロポア、根系)が、水の流れを調整し、土壌の流出や侵食を抑える役割を果たしていると考え、カーブナンバー法の評価では、土壌の効果を直接的には考慮せず、森林が森林として維持されることを評価対象としています。総じて、森林が適切に維持されていることで、降雨が直接土壌を流出させるのを防ぎ、水流出の速度や量を緩やかに調整するため、土壌と流域全体の健全性が保たれると考えております。また、団粒構造が発達した森林土壌が維持されることで、土壌中の隙間(空隙)への水が貯留されます。小さい隙間から大きい隙間への多様な空隙の存在により、降雨開始からそれぞれの大きさへの隙間での水の貯留に時間的な差が生じることからピーク流量の遅れと低減が見られる(谷, 2023)こともここに関連します。団粒構造の形成など土壌の質的評価は重要ですがここでは、森林が維持されることで、森林の健全な土壌も維持されることを前提としています。ご指摘のような、土壌の重要性は、簡易評価手法として、考慮していなくとも、森林の水源かん養機能評価としては大変重要であることから、最終報告書においては、明確に記載し、理解を深められるようにします。
参考文献:谷誠(2023)矛盾の水害対策―公共事業のゆがみを川と森と人のいとなみからただす 新泉社 280pもっと見る
Q.
多くの人が簡易に評価できるアプリの開発を期待します。
計算法を統一し定量評価できるルールを構築して頂きたい。林野庁管理のアプリ等、同一ソフトにおいて、ユーザーが簡単に扱える(悩まず入力できるような)ツールの提供を。
A.
使いやすいものを提案していくことが重要と考えております。そのうえで、今回の簡易評価手法については、対応表など用いる、洪水緩和評価であるカーブナンバー法の計算はエクセル等での計算シートを作成し、降雨量の入力や地質を選択することで計算できるような方法を検討しています。アプリについては、今回の手法のニーズなどをみながら、将来的な導入の有無を含めて考えていく予定です。もっと見る
Q.
定量化手法が対象とする流域規模を提示してほしい。
小流域の評価手法の調査・研究を進めて欲しい。
400ha程度の森林の水源涵養機能を向上させる森づくりをどのような、視点、手法で進めればよいか。
A.
本簡易評価手法で用いている基礎データは、森林総合研究所で長期的に観測されてきた山地森林流域の降雨-流出データです。そのため、本簡易評価手法を適応できる流域面積(サイズ)があります。セミナーでのご意見などを含めて、対象とする流域サイズを具体的に明示するように、委員会で検討し、最終報告書等では、丁寧に記述していきます。もっと見る
Q.
針葉樹(人工林)と広葉樹(天然林)による違いに関心がある。林齢や手入れ状況がどう反映されるか、詳しい解説がほしい。
A.
本評価手法で対象となる蒸発散の評価では、計算上は針葉樹(人工林)と広葉樹を区分するように進めています。一方、混交林などのように混在している場合までは考慮対象となっていません。多様な森林管理や目標林型などをどのように考慮していくのかは今後のご意見をいただきながら、考慮出来る範囲で取り組んでいきます。
なお、間伐遅れのヒノキ林以外は、地表面の攪乱がなければ、土壌浸透能は針葉樹と広葉樹で差はないとされています。もっと見る
Q.
結果の精度についても解説がほしい。
地域によって精度にも差があるのではないか。
A.
現時点で洪水緩和機能(第二段階)の評価、水資源かん養量の評価(第三段階)ともに、推定結果の誤差範囲などを提示するような定量的精度については示していません。一方で、対象森林における水源かん養機能の評価を行う場合には、降雨量の算出の精度などの多様な要素が算出結果に影響します。そのため、ご意見をふまえて、どのような要素が精度に影響するなど、解説に加えて行く予定です。
地域による精度への差も生じます。洪水緩和機能の評価では降水量と地質、水資源かん養機能の評価では降水量や気温の指標は重要となり、気象庁等の気象観測地点からの距離や標高差により得られる結果の精度にも差が生じます。これらの点も解説資料では丁寧に記載していく予定です。もっと見る
Q.
カーブナンバー法は日本の河川分野でよく使われる手法ではなく、乗り換えに問題はないか? 解説資料で比較をしてほしい。
A.
河川分野で用いられる計算では、基本高水のピーク流量の計算等が行われています。一方、カーブナンバー法では流出量を計算することはできますが、ピーク流量を直接算出することはできません。今回の手法は、従来の手法に対して、乗換を勧めるものではなく、洪水緩和機能を「降雨時の流量」として算出するものとして異なる目的を有します。ここで提案している評価手法は、水の量的換算(Volumetric Water Benfit)を目的としていることから、ピーク流量の評価ではなく、降雨時流量全体としての評価を行っています。このような違いについては、解説資料にて丁寧に説明していく予定です。もっと見る
Q.
気候変動を考慮できる蒸発散、水源かん法機能の評価を発展させてほしい。
A.
気候変動のような長期的な評価を対象とする場合、気候変動による気象条件等をより明確化する必要があり、かつ不確実性が大きくなります。本簡易評価手法は、企業や自治体、NPO法人等が、数年程度の森林管理による水源かん養機能の評価を目的としたものであることから、気候変動の影響評価は対象としていません。もっと見る
Q.
積雪・融雪の評価の現状と今後を教えていただきたい。
A.
本簡易評価手法の第三段階である水資源かん養量の評価では、降雪による遮断量については、考慮しています。すなわち、人工林の密度管理等による遮断率の変化と林内の積雪量の推定は可能です。しかし、林内の積雪量と融雪量については、考慮されていないことから、今後、森林における積雪・融雪量について考えていくことは重要です。一方で、森林内における積雪・融雪量についての科学的知見をさらに積み上げる必要があることから、本簡易評価手法では遮断量のみで、積雪・融雪量の評価は対象としていません。もっと見る
Q.
水源涵養機能は森林土壌との関連が大きいと思うが、林木の根系の生長も影響するか?
A.
森林土壌と水源かん養機能は重要な点です。一方で、本簡易手法では、森林が存在することで、森林土壌が十分に存在している状態であると仮定しています。そのために、地質による違いは考慮しているものの、土壌の深さなどは考慮していません。そのことから、根系の発達等は、土壌の透水性などに影響を及ぼすと理解されていますが、本簡易手法では、樹木根系などを含む土壌の違いは考慮していません。もっと見る
Q.
林齢が根の伸長に影響を与える期間はどれくらいまでを考えたらよいか?
A.
林齢と根の伸長は、樹種や立地条件により異なります。根については、森の根の生態学(2020)平野恭弘ら(編集)共立出版にまとめられています。
Q.
水質に関する評価、指標はないのか?
窒素循環も取り上げることを期待。
A.
本簡易評価手法では、Volumetric Water Benefitの考えに基づいた水の量的評価を目的とし、第二段階における洪水緩和機能、第三段階における水資源かん養量の量的評価をおこなっております。そのため、水質については、重要な項目であるものの、考慮していません。解説資料では、そのような点も丁寧に説明しつつ、ご提案は今後の参考とさせていただきます。もっと見る
Q.
植林活動によって水源涵養量は増加するのか? それを定量化する方法は検討されているか。
A.
ご指摘の植林活動は、森林伐採後の植林活動もしくは、耕作放棄地等の植林活動等が考えられますが、密度や樹高などの変化に伴う森林状態の変化とそれに伴う水源かん養機能(主に、水資源かん養)については、定量化することは可能であり、本簡易評価手法により水源かん養量の増減かポテンシャルとしての変化を示すものとして評価できます。もっと見る
Q.
プレゼンのあった森づくり活動の事例をより詳しく聞きたい
A.
令和5年度の報告書にいくつか紹介されていますので、ご参考ください。
Q.
下層植生の衰退した森林からの土砂流出と濁水に関する情報があれば、ご教示いただきたい。
A.
書籍としては、「人工林荒廃と水・土砂流出の実態」2008年刊行、恩田裕一 (編集)岩波書店 が土砂流出や濁水の発生についてまとめられています。
Q.
TNFD及びCSRDについて詳しい説明が欲しい。
A.
解説資料内において、TNFD及びCSRD等に関する詳細な説明までは行わず、簡易な紹介に留めています。詳細については以下リンク等の文献を参照ください。CSRDとTNFDの連携に関するガイダンス、ウェビナー:CSRDとTNFD、TNFD勉強会動画(日本語、Youtube)もっと見る
Q.
森林機能の評価額までどうつなげるのか?
A.
本簡易評価手法では、Volumetric Water Benefitの考えに基づく、洪水時の流出(ピーク流量ではありません)と水資源かん養量を評価するものであり、これらで得られる水量を貨幣換算するものではありません。前述のように、本手法が対象とする流域面積が1km2程度の森林流域であること、対象とする時間を数年程度としていることからも、森林管理の活動と水量をつなげることを目的としており、評価額の算定までは本事業の中では行いません。もっと見る
概 要
近年、地球温暖化防止など地球環境保全の観点から、
企業等の多様な主体による森林づくり活動が盛んに行われています。
SDGsの気運の高まりやESG投資の流れの拡大等により、
これらの活動はさらに加速化しています。
林野庁では、こうした企業等の多様な主体による森林づくり活動をさらに促進させるため、
森林の多面的機能の一つである水源涵養機能について、
森林づくり活動の効果を簡易的かつ定量的にも評価できるような、
わかりやすい手法を検討しています。
この度、定量化の検討に至った背景や現在検討している定量化の手法について、
企業をはじめとする森林づくり活動に携わっている団体や
自治体に広く周知するため、セミナーを開催します。
会場/セミナー規模
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- 開催方法
- ハイブリッド開催
(オンライン・会場参加)
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- 会場参加
- 木材会館7階大ホール
(東京都江東区新木場1-18-8)
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- 定員
- 会場 100名 / オンライン300名
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- ※質問は会場のみの受付となりますのでご了承ください
プログラム
多様な主体による森林づくり活動と
水源涵養機能に関するセミナー
~新たな定量化に向けて~
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- 開会あいさつ(5分)
- 林野庁
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- 趣旨説明(15分)
- 名古屋大学大学院 教授 五味 高志
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- 基調講演(30分)
- 「森林の水源涵養の定量評価手法について」
宮崎大学農学部 准教授 篠原 慶規
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- 報告(各5分)
- 「パネリストによる事例報告」
熊本市環境局環境推進本部水保全課 政策監 永田 努
サントリーホールディングス(株) 部長 瀬田 玄通
公益財団法人ニッセイ緑の財団 総務部長 畔津 太郎 - 「パネリストによる事例報告」
・熊本市環境局環境推進本部水保全課 政策監 永田 努
・サントリーホールディングス(株) 部長 瀬田 玄通
・公益財団法人ニッセイ緑の財団 総務部長 畔津 太郎
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- 休憩+会場設営変更(15分)
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- パネルディスカッション(60分)
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「森林の水源涵養機能の維持・向上に関する取り組み事例と課題」
モデレーター :名古屋大学大学院 教授 五味 高志
パネリスト :熊本市環境局環境推進本部水保全課 政策監 永田 努
サントリーホールディングス(株) 部長 瀬田 玄通
公益財団法人ニッセイ緑の財団 総務部長 畔津 太郎
コメンテーター:宮崎大学農学部 准教授 篠原 慶規
国立研究開発法人 森林研究・整備機構森林総合研究所
研究ディレクター 玉井 幸治 -
「森林の水源涵養機能の維持・向上に関する取り組み事例と課題」
モデレーター:
・名古屋大学大学院 教授 五味 高志
パネリスト:
・熊本市環境局環境推進本部水保全課 政策監 永田 努
・サントリーホールディングス(株) 部長 瀬田 玄通
・公益財団法人ニッセイ緑の財団 総務部長 畔津 太郎
コメンテーター:
・宮崎大学農学部 准教授 篠原 慶規
・国立研究開発法人 森林研究・整備機構森林総合研究所
研究ディレクター 玉井 幸治
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- 閉会あいさつ(5分)
- 林野庁
※本資料は会場で配布する予定です